伝統産業従事者の、まよい道
- 美彰院-BISHOIN- 美術修復スタジオ

- Dec 22, 2025
- 6 min read
まよいの森で絶賛遭難中?
はじめましての方も、お久しぶりの方も目を留めていただきありがとうございます。
令和7年度より京の伝統産業わかば会の役員を務めさせていただいております、坂本と申します。
活動の中で、さまざまな若手職人の方々とお話しする機会があります。
技術への情熱。
伝統を守る誇り。
そしてその裏にある「食べていけるのか」「このままでいいのか」と言ったご自身の事業に対する持続可能性に関する言葉にできない不安や葛藤──
正直に言えば、私自身もまだ“まよい道”の途中にいます。
私は家業を継いだ職人ではありません。
扱っている品目は京漆器ですが、いわゆる伝統的な製造ではなく、直しの仕事や金継ぎ体験の提供、さらにゲストハウスでの京漆器の展示販売など、“変化球”の活動が中心です。
王道とは言いがたい立ち位置のまま、多くの若手職人が在籍するわかば会の役員を務めさせていただくことに、実を言えば大きな負い目やためらいがあります。
それでも今、こうしてブログを書いているのは、「正統派じゃないと、語ってはいけないのか?」「若手(もちろん私を含め)にも根深い“職人はこうでなきゃいけない”という保守的な思い込みこそが、斜陽産業に拍車をかけているのではないか?」そんな問いや、気づいてはいても触れない矛盾が、心のどこかにずっとあるからです。
今回は伝統産業に従事する若手職人にフォーカスを当ててお話して行ければと思います。
結果からお話しすると、完璧な答えはありません。
でも、若手が「迷っているのは自分だけじゃなかった」と思えれば良いと思います。
そして、いつか一緒に“迷いながら進む仲間”として語り合える日が来るように──そう思いで書かせていただきます。
日本の伝統産業は今、過渡期です。
誰も正解を知らない。
まよいの道は森になってどんどん広がっている気もします。
ただし、この道で悩んでいるのはあなただけではありません。
(^^♪\\\ここ、何処やねん///
ぜひ、一緒に前向きな気持ちで迷ってみましょう!
まよい道の黄金ルート
「職人の道を選んだ以上、正しく歩かねば」と言う呪い
いろんな背景を背負って日本の伝統産業従事者の皆さんはお仕事をされていると思います。このセクションでは『まよい道の黄金ルート』と題しまして、大体の職人が大なり小なり経験した壁を記載して行こうと思います。
列挙する内容は全て坂本調べです。
経験年数や肩書きは違っても、「職人として生きていく」その根っこには、同じような迷いがあると思います。
「食べていけるのか」不安定な収入と将来設計→BtoGで毎年コンスタントに受注のある知り合いの話を聞くと焦る
手取りが低い、仕事が月ごとで偏る、家族を持てるか不安など→展示会やイベントの出展はあるけど、継続的な注文や催事ではリピーターに結びつかない
販路・営業・広報が苦手→時代に合ったやり方を模索したいけれど、頭が固すぎて(社会経験スキルに負い目がある)アイデアが全く出てこない
作ることには集中できるが、売る・発信することに抵抗がある→作ることには自信がある。でも、売るのは苦手→そもそも論、なぜ職人なのに手仕事以外の事をアレコレ枝を伸ばさないとならないのか?→発信したらしたで、自分だけが目立ってしまうことは絶対に避けたい→加工のみの仕事なのでオリジナルで外に出せるものが何もない/角が立つ
SNSやHPを含め営業方法がわからない→SNSやホームページの必要性は理解しているけど、手が動かない
顧客が高齢化していて、新しいマーケット開拓に苦戦→先代から譲って貰った口もどんどん高齢化していき、暖簾は古くても外に出せるブランド性が育っていない→紹介で受ける事になった仕事の予算が全然合わず、断りたくとも断れない
孤独感と情報量の少なさ→同世代・他地域で同種目の職人と話す機会がない→弟子・修行中の環境から相談できる仲間がいない→情報の少なさゆえに、「自分だけが取り残されている気がする」
伝統と革新の間での葛藤→「変えたら“伝統”じゃなくなる」という巨大なプレッシャー→老舗の格を下げる真似はみっともない→これまでの仕事口だけでこれからの30年も食べていけるのか
新しいことをやりたいけど、挑戦が怖い&戸惑いがある→矢面に立つ覚悟なんて自分には到底背負えない→コツコツ手だけ動かして好きな時間を過ごしたいだけなので、多くを求めないで欲しい
立場別に見る “まよい道”
ではここからは、世代によってどんなまよい道に入りやすいのか一緒にみていきたいと思います。
※この内容も全て坂本調べです。
修業中の職人(20代)
月給が少なく、生活がギリギリ。バイトとの両立で体力も削られる。
親方に気を遣って、思っていることが言えない。
独立しても本当に食べていけるのか、不安しかない。
作家として早くから成功している同世代を見ると落ち込む。
独立した職人(30代前後)
営業・受注・納品・経理……すべて自分でやっている。
制作時間が取れず、「本当にやりたいこと」がどんどん遠のく。
イベントに出展しても、単発で終わってしまう。リピーターがつかない。
価格のつけ方がわからず、安く売ってしまう自分が嫌になる。
工房の家賃、家族を養うお金、生活の現実がのしかかる。
家業を継いだ職人(30代〜40代)
親の代のやり方と、自分のやりたい方向が違う。
「跡継ぎなんだから」と言われるが、自信も責任も持てない。→親の実績と自分の技術には誰が見ても格段の差がある(親が凄過ぎて震える)
制作と経営の両立が難しく、家族との関係も微妙になることがある。→先代や親類家族の期待値に今のままでは答えられない→経営者・営業としての修行は皆無だった事に今更気付く。引き出しの少なさに愕然となる時がある
技術はある。でも売れるか、継げるかは、別の話すぎた。→世間ではM&Aは聞き心地の良いニュースになるけれど、もしかして自分は継げなければ、帰る家も失う派?
まよっているのは、「止まっている」からじゃない
現実は単純ではなく、誰もが表に出さない『まよい』を持っている
迷っているのは、歩いている証拠
進もうとするからこそ、考えることが増える
「王道」=すべてが整っている人たちの道、ではない(自分を信じて!)
迷いながらでも、道はつくっていける
「この道でいいのか」と、長い人生あれこれ思うことがあるかもしれません。
でも、それは“道を間違えている”からじゃない。
自分の道を、自分でつくろうともがく故だと信じませんか?
まよっているのは、あなた一人じゃない。
このブログでは職人が「生きていく」ために必要なことを、ひとつずつ整理して、言葉にしていきます。
見に来てね!






